名鉄のLE-Carシリーズ
Nagoya Railroad - Light Economy-Car series.
名鉄が閑散線区向けに投入した富士重工製軽快気動車シリーズ。
輸送量の少ない区間の合理化のため、名鉄では一部区間を電化廃止。富士重工製"LE-CarⅡ"シリーズを投入した。このとき採用された八百津線は、導入前に富士重工が行った技術開発のための試験線だった経緯がある。
名鉄のLE-Carシリーズ
保有車両一覧
■下記のリンクをクリックするとその項目へジャンプできます
キハ10系
名鉄のLE-Carシリーズ
記念すべき初代車両。
富士重工製乗合バスがベースの2軸車両で、当時赤字国鉄(JR)ローカル線が第三セクター鉄道に転換した直後ということもあり各社で採用されるが、営業用の第一号は実はこのキハ10系。八百津線での試験の実績もありそのまま採用されたよう。以降の他社ではあまり見かけない角ばった貫通型形状は試験車由来のもの。
Nスケールでは、古くは金属キットなどでひっそり発売されていたらしい。
他社に波及しなかったオリジナルデザインであるがゆえにプラ量産品での製品化は程遠く、TOMIXから発売されていたLE-Carシリーズ製品もとっくの昔に姿を消しているため、今後も製品化の可能性はほぼないであろう。かろうじて同じ前面デザインのキハ20系が鉄道コレクションとして発売されたので、組み合わせて製作してみた。以下に製作記を記す。
製作記
キハ10系
製作のベースは言わずもがな、鉄道コレクションのキハ20系と、TOMIXからその昔発売されていた富士重工LE-Carシリーズ製品。
車体はキハ20系から、シャーシはLE-Carから流用する。LE-Carからはもう少し流用できそうな気もするが、デザインの至る所が違うので上回りは全く役に立たない。
車体の切り継ぎ位置は、長く残す方は乗務員室扉側から6枚目の窓、短い方は客ドア直後の窓。キハ10系には小さいながらご丁寧に乗務員室扉がついているために客扉の位置がズレており、そこに気を使う必要がある。また窓割りは異なるため窓桟は取らないといけない。
幅も本当は詰めたほうが良いと聞いたが、実車諸元表の数字を1/150したものと車両の実測ではほぼ差が見られなかったためそのままにした。車体幅の調整が必要ならエラい大変なので、ここで製作をやめていたと思う。ただしそのままではキハ20系と同じ顔になってしまうので、キハ10系の実車写真を見ながら前面窓上の傾斜を再現した(上掲画像右)。
車体は切り継いでショートにするだけなので、それなりに工作経験があれば簡単な作業だと思う。この車両最大の難所は側面窓だ。
初期に導入された車両は非冷房だったこともあってか、路線バスなどのサイズ感の2段窓が採用された。これも他社にあまり波及せずオリジナリティあふれるポイントとなっている。バスコレクションから取るにしてもまとまった数の車両をドナーにしなければならないし、大きさが異なればさらに台数が・・・。ということになってしまうので悩みどころ。
今回の作例では鉄道コレクション第14弾の名鉄3800系列(もしくは同型車)をドナーとして窓ガラスと窓桟を移植することで解決。縦寸が明らかに合わないので、窓枠の下辺は切り落として銀テープで新たな窓枠を追加した。
側面窓の表現は昔から苦労しているようで、車体のホワイトメタルと一体成型にしたり、過去の作例では平らなプラバンにすべて印刷して裏から貼ったりといった表現を見たことがある。
ちなみに今回部品供出した車体は、私が生まれて初めて購入した鉄道コレクションの車両。当時はまだ学生だった。10年以上の時を経てドナーという形で脈々と受け継がれていく。
完成。後期に導入された15・16の2両を製作した。連結器も交換しているので好きに組み合わせて走行できる。
右の写真でキハ20系と背くらべをしている。元のボディは同じはずだが少しの加工で顔つきも差別化を図ることができ大満足。あかいろでんしゃシンドローム名鉄シリーズの変わり種として末永く大事にしたい。
キハ20系
名鉄のLE-Carシリーズ
2代目車両。
キハ10系のような2軸小型車ではラッシュ時などの輸送力に難があり2車連結運転するなどしていたようで、小型化した意義が薄れていた。そこで輸送力向上のため本系列では4軸2台車のボギー車となり、キハ10系の意匠をそのままにストレッチされ大型化。全長はおよそ4m長くなった。
名鉄LE-Carシリーズで唯一、鉄道コレクションとして製品化されている本系列。兄弟車である他社車両とともに発売された。
製品は行先板を含め表記類はすべて印刷済み。気動車なのでパンタグラフも必要なく、そのまま説明書通り動力を取り付ければ手軽に仲間にいれることができる。いわば廉価な鉄道コレクション向きの車両だ。
キハ30系
名鉄のLE-Carシリーズ
3代目車両。
富士重工での呼び名が"LE-DCシリーズ"に変わり、バスがベースだったこれまでと異なり完全な鉄道車両の見た目となった。キハ30系は他社に導入されたこのシリーズの車両と大きく異なり、ドアを片側3つとして輸送力を高めた。運賃箱で運賃収受することが多い閑散線区向けワンマンカー用気動車でドアが3枚あるのは珍しく、このシリーズでは唯一の存在だった。
レールバスそのものがあまり製品化実績のないNゲージ界隈で、同系列の中で特にオリジナリティの高いこのキハ30系は製品化とは程遠いであろう。ガレージキットメーカー"kitcheN(キッチン)"がTOMIX製品をベースに、側板を特徴的な3扉に取り替えて表現するコンバージョンキットを発売している。以下ではそれを用いた製作記を記す。
製作記
キハ30系
キットはTOMIXから発売されている同系列の一般的な形態である2つドアのスタイルから側板を取り替える方式。今回の種車は樽見鉄道ハイモ295形と、毎号ついてくる付録を組み立ててジオラマを作りあげる週刊誌の応募者全員プレゼントになっていた里山交通(架空)のキハ2001。どちらも中古で安価に手に入れた。形式こそ違うがどちらも同じ形態。種車のバリエーションが多いのは助かるポイントだ(入手しやすいかどうかは置いておいて)。
ボディは説明書にしたがって雨樋のラインで側板を切り取った。その後裏打ちと貼り合わせた新しい側板と合わせる。接点が雨樋となるため段差はあまり目立たなくなるが、コンバージョンキットの経験が少ないわたしには厚みも素材も違う板を貼り合わせるのはすこし難しかった。継ぎ目はすべて埋め、不自然な凹凸が出ないように調整。天井との塗り分けも種車とは位置が変わるので、ここで屋根パーツも一緒に接着してボディとすべて一体にしてしまった。
製品のエッチングパーツには前サボ差しも付属している。前面貫通扉に渡り板のモールドがあるため、本来は削り取ってから取り付けがいいはずだが、手抜きでそのまま上からかぶせた。あまり目立たないのでよかった。
上の写真は先で述べた工程をすべて終え下地をアイボリー系で塗装したところ。
それぞれの窓まわりだけを赤で塗りつぶしているキハ30系の特徴的な塗色は、スプレー塗装では水平が取りづらいなど限界があった。そこで今回はベースのクリーム色のみ塗装で再現し、スカーレットの部分はデカールを作成し貼付した。
上の写真は、左がスプレー塗装にて再現したもの。右がPCで作成したデータをインクジェットデカール用紙に印刷して各所に貼付したもの。窓まわりの柄は角取りがされており、マスキングのみで再現するより正確に表現することができた。またPCで作成した1つのデータをデカールで必要数印刷しているため、常に意匠の寸法を一定にすることが可能となり、見栄えも向上した。加えて写真ではよく見えないが、名鉄のコーポレートロゴも位置を合わせてスカーレットとともに印刷してレタリング作業を簡略化した。
最後に各種パーツの取り付け。
屋上機器・前面窓ガラス・ライトユニット・シャーシは元の製品のものを使う。また側板裏面にはシャーシ固定ツメの接着位置ガイドがあり、種車の窓ガラスから固定用ツメだけ切り出して接着するとシャーシが種車同様に戻せる。その他、スカートは専用のものがキットのエッチング板にセットされているため組み立てて取り付け。渡り板は先述の通りサボ差しで隠してしまったので、工房にあった余りパーツを塗装のうえ取り付けた。
カプラーは台車との距離が非常に近く、TNカプラーだと通常とは復位バネ位置が違う特定の製品しか取り付けられないため、台車とのクリアランスが十分取れるマイクロエース製のマイクロカプラーを採用。アームが長いため、連結しても渡り板同士が干渉することなく走行できるようになった。
完成。31と32の2両を製作した。
コンバージョンキットというものをまともに組み立てたことがなかったが、全体にさっぱりと組み立てることができた。もちろんグリーンマックスの組立キットなどのように甘やかしてはくれないし、個人的には仕上がりはいまいちだが、完成したときの満足感はとてもあって楽しかった。
名鉄のLE-Carシリーズ
ギャラリー
富士重工カタログカラー車と。
資料などによれば、八百津線で試験を行っていた試作車両は白地に赤帯のカタログカラーをまとっていたそう。ちょうど保有していたので並べてみた。
試作車は片面をこの当時の貸切バスタイプ、反対面は名鉄で採用された路線バスタイプという両面で違う見た目を持つ車両だったのだとか。
3系列並びで。
同じコンセプトで製造された合理化施策用の小型ディーゼルカーだが、時代ごとに姿形が大きく異なり路線に華を添えていたよう。